全員主治医制のこころみ、メリハリの重要性

長良医療センター産科 岩垣重紀

 

 私が働いている長良医療センター:産科では、

ちょっと普通と違う診療体制を取っています。

 

 それは『全員主治医制』です。

 

 通常の主治医制による診療は、一人患者さんの診療を、一人から数人の主治医が行うものです。もちろん判断が難しい場合はその診療科全体のカンファレンスで治療方針を決めていくことになりますが、日々の診療は主治医が担当します。我々が行っている全員主治医制は、時に50人に及ぶ患者さん全員を、7人の医師全員で主治医をするというものです。想像がつきにくいかもしれませんが、曜日ごとに回診する病室や処置、分娩の係が決まっており、一週間で全員を担当できるシステムです。全員主治医制で重要な鍵となるのが、医師の間での情報共有です。そのため毎日昼食後に全員参加のカンファレンスを行って、情報共有と治療方針のディスカッションを行っております。

 全員主治医制のメリットは、医師全員が患者さん全員の情報を把握しているため、主治医がいないためにその患者さんの現状がわからないということが起きません。担当患者さんが陣痛発来したため、休日の予定を返上して病院へ駆けつけることも、患者さんの状態が悪化したため、予定していた学会に出席できなくなることもありません。私たちの施設では、重症な産科患者さんを取り扱っていながら、産科にありがちと思われている『夜も昼もない呼び出し』というものは存在しません。現に週末には、緊急時を除いて当直医以外は病棟に来ることはありません。OnとOffのメリハリをつけることで、自分の勉強や趣味に時間を十分使うことが可能です。家庭を持って仕事を続ける女性医師にも優しい診療体制でしょう。


 私たちが扱っている患者さんは時に、教科書に載っている治療方法では対応できないこともあります。主治医制の場合、患者さんに対する責任が個人に重くのしかかり、医師のメンタスヘルスが保てなくなってしまうこともあります。診療に一生懸命な先生ほど、バーンアウトして診療の現場を離れてしまうというリスクがあります。全員主治医制では難しい患者さんの治療方針を決める際、医師全員で意見を出し合い、その時点で最良と思われる医療を目指します。重症な患者さんを診療する際でも医療の質の均一化が図れるとともに、医師が燃え尽きることなく診療を続けることができます。


 また全員主治医制だと、一人の医師が経験できる症例数も多くなるというメリットもあります。モチベーションさえあれば、たくさんの症例にどっぷりつかって、短期間でスキルアップすることも可能です。


 もちろん全員主治医制を維持するためには一定の条件が必要になります。そのキーワードは『責任感』と『信頼』です。各医師がプロフェッショナルとしての自覚をもち、自分の役割を責任も持って全うし、互いを信頼しなければ全員主治医が一つの有機体として有効に機能することはありません。私たちは、互いにもっとも信頼される存在であり続けるため、妥協をせず日夜努力を重ねているのです。

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