「胎児治療の日本有数のメッカ」〜まずは胎児循環学を学ぼう〜

長良医療センター産科医長 高橋雄一郎  

 「ヘリコプターで山々、県をこえて妊婦さんが救急搬送されてきた!

妊娠19週、MD双胎の一児は胎児水腫が進み、羊水量もとても多くなり、母体は羊水過多症で呼吸困難を来している。

もう一児は子宮の横に張り付いて動かず膀胱も全くみえない。
血流も絶え絶えな状況である。
我々は直ちにエコー検査で双胎間輸血症候群の診断を行い、夕方には産科チームが集い、胎児鏡下レーザー手術を行うことにした…..手術翌日、両児の心拍は認められ、二人とも元気に動いていた。胎児治療により峠をこえた瞬間であった。」

 胎児治療は、いままで産科で介入しなければ亡くなっていたり、高率に後遺症を来してしまう疾患に対する、子宮内で治療を施す高度な医療です。

岐阜では長良医療センターで行われています。
双胎間輸血症候群(TTTS)のレーザー治療だけでなく、胸水症例に対する胸腔 - 羊水腔シャント術、胎児輸血に加え、人工羊水注入療法による胎児循環の改善なども行っております。

東海地方だけではなく日本全国から妊婦さんがやってきて治療を受けられています。

https://www.hosp.go.jp/~ngr/sanka_index.html


 しかし胎児治療、というと手術手技ばかりがめにつきますが、我々はそれを支える高度な胎児循環機能評価こそがその成功の鍵と考えています。胎児の脳血 流、貧血評価、心機能などなど(我々は「胎児循環学」とよんでいます。)の正確な評価ができないと適応、治療効果判定すらできないのです。

例えば、超音波 を用いた中大脳動脈による胎児貧血の評価も中途半端な技術では診断にすら結びつきません。正確な羊水量、胎児発育評価、心拍モニタリングの評価、臍動脈、 下行大動脈、静脈管、下大静脈、肺静脈血流などの血流評価など、どれをとっても会得するには何年もかかる難しい指標ですが、これらをみっちりとトレーニン グします。

岐阜ではそれを勉強できるようなローテーションシステムがありますので、「胎児循環学」を若手の医師でも学ぶ事ができます。

長良医療センターで は、毎日のようにハイリスク胎児、母体が入院してこられますので、膨大な症例の経験が短期間でできるメリットもあります。

半年も研修していますと一般の周 産期専門医が数年で経験する症例をほとんど経験できるといってもよいでしょう。
胎児の医療に興味がある方、また少なくとも安全な周産期管理を身につけたい 方にとっては格好の研修地域であることは間違いないでしょう。
また、長良医療センターには胎児治療学会の事務局があります。
多施設共同研究や厚生労働省の 班会議などを通じ、つねに日本の最先端での活動を行っております。basicな産科学の研究に加え、胎児循環の基礎から、胎児治療までこだわりをもった指 導をおこなっております。

「赤ちゃんを救いたい」と思う方にはよい研修環境であると思います。

夢プロジェクト「ぎふの産婦人科医の魅力」岐阜県、産婦人科医、医学生向けイメージ01
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