若手医師の
若手医師による
若手医師のためのブログ(不定期更新)
題して、
ほりっちょダイアリー 〜和良いあり、涙ありの地域奮闘記〜
若手医師の徒然なる奮闘記を等身大に綴られたブログです♪
さまざまな産婦人科の、リアルな生活を除いてみませんか?
奮闘記 vol.6 2024年9月
みなさま、残暑お見舞い申し上げます。台風がようやく過ぎ去ったかと思えば、じめじめと蒸し暑い日が続きうんざりしてしまいますね。郡上では、早朝や夜は涼しい日も時折あるようで、夜間は冷房なしでもぐっすり眠られる日も出てきました。
さて8月2日、3日と2日間にわたり、令和6年度岐阜県へき地医療研修会が開催されました。今年で15回目となるこの研修会は、将来医師を目指す高校生や医学生が夏休みを利用して、地域医療に触れながら様々なことを体験してもらうものです。当診療所にも5名の高校生、1名の医学生が訪れ、施設内や町内の案内、訪問診療やケアマネージャーさんとのお宅訪問に同行してもらいました。メモを片手に持った学生たちからは、とにかく質問攻め。「地域にいて困ることはありますか?」「患者さんのどんなところを見ているのですか?」一瞬返答に悩むような鋭い質問もありました。
訪問診療の道中、山川に囲まれた自然豊かな景色に思わず興奮する高校生の姿も··「ここの景色、すごく映える!」とスマホで写真をパシャリ。今時ですね。
診療所での研修が終わり、解散前に一人一人に感想を聞いてみました。
「患者さんとの距離がものすごく近いと感じた。」
「岐阜市に住んでいるけれど、こんなに自然豊かな場所には初めて来た。」
「思ったよりも診療所が大きくて綺麗だった。」
「お昼ご飯で出た小魚が、とても若者が食べるものではなかった。」
ん?ん?
いい雰囲気で終わるつもりでしたが、突然のランチ定食への辛口コメントをいただきました。話を聞いてみると、詳細は不明ですが小魚の甘露煮?のようなものだったと··
うーん、今度食べてみることにしましょう。
一番返答に困ってしまう内容でした。
奮闘記 vol.5 2024年7月
皆様こんにちは。じめじめと蒸し暑い日が続いております。先月頃から段々と田植えの時期がやってきたこともあり、外来の診察室でも「昨日、畑をやりすぎて腰を痛めた。」「田植えに夢中になっていたら、変な虫に噛まれた」などの会話が飛び交うようになってきました。農作物シーズンの到来ですね。
さて、6月には和良地域の保育園、小・中学校で内科健診がありました。児童たちは保健室の前で整列して自分の番を待ち、診察が終わると「ありがとうございました!」と元気いっぱいお辞儀をして教室に戻っていきます。小・中学校の健診は比較的スムーズに進むのですが、保育園の健診はほぼ戦争です。聴診器を持った自分を見ただけで注射を打たれるのではと勘違いし泣きじゃくる子供、何度も何度も教室から逃げ出そうとする子供も何人か・・
保母さん3人がかりで暴れる子の手足を抑え込みながら診察することもありました。真夏の保育園で大の大人たちが汗だくだくになりながら奮闘しておりました。
7月には学校地域保健連絡会が開催され、学校医として参加させていただきました。この会は、地域の幼稚園、学校に関わるスタッフ同士で子供たちの健康問題の協議を行う会のことで平成9年から行われているとのことです。学校医、歯科医、薬剤師をはじめ、地域の保育園、小、中学校の園長先生・校長先生や養護の先生、PTA会長の方々の参加もあり、活発な議論が繰り広げられました。平日の夜にそのような方々が一同になって話し合う機会というのは、和良地域以外では少ないのではないのでしょうか。子供たちに関しては、スマホやタブレットの使用を一定時間制限する「ノーメディアチャレンジ」に関する活動が報告されました。子供たちがそのような活動をすると、その兄弟や親御さんたちにも自然と伝播していきます。「うちの息子、娘が頑張っているのだから、自分たちも・・」と親御さんたちも協力して、食事中のテレビをやめてみたり寝る前のスマホを制限してみたり・・子供からその家族へ巻き込めるような活動が何かあると、その地域にどんどん広がっていくのでそのような形で普及できるとよいですね。
「地域」と聞くと高齢者ばかりかと思いきや、実は子供たちの健康や未来を守る活動にも力をいれて行っております。このような取り組みを継続すること、そして次の世代にどんどん伝えていくことの重要性を改めて認識しました。
奮闘記 vol.4 2024年5月
皆様こんにちは。
新年度もあっという間に1か月が経過しました。いかがお過ごしでしょうか。メンバーがガラリと変わり、慣れない場面や多少なりとも戸惑う場面があったのではないでしょうか。自分の診療所もスタッフ、特に事務職の方々がガラリと変わり当初はバタバタしたこともありました。しかし皆さん段々業務にも慣れてきたようで、今ではスムーズに職務をこなされている様子です。スタッフには日々助けられてばかりですので、すぐに診療所業務に慣れてもらえるのはとてもありがたいことです。
さて、今回は訪問診療に関してお話をしようと思います。
診療所では、通院手段がない方、本人・家族の希望があった方に対して訪問診療サービスを導入しております。2024年4月現在、20人程度の利用者の方がいらっしゃいます。調べてみたところ、利用者のご自宅の最東端から最西端を結ぶとその距離実に16km、おおよそ名鉄岐阜駅から新鵜沼駅までの距離を訪問車で走り回っていることになります(市街地でイメージすると時間がかかるように思われますが、地域では信号や交通量が少ないのであっという間です!)。
サービスを利用する理由は様々で、元々寝たきりでADLの観点から通院が難しい方、ADLは自立しているものの通院手段がない方(免許返納、家族の都合など)、中には病院嫌いで通院はしたくないけれど訪問診療ならば利用したいという方もいらっしゃいます。もちろん最期の時間をご自宅で過ごしたいという強い希望のある方も利用されており、昨年1年間では5人の方がご家族に見守られながら最期をご自宅で過ごされました。
他人の家にお邪魔をする、ということに少し抵抗がある方がいらっしゃるかもしれません。訪問する側もされる側も変に気を張らなければいけないのではないか、どのように立ち振る舞ったらいいのか・・実を言うと当初、自分も抵抗がありました。
しかし実際訪問してみるとご自宅でしか分からない数多くの発見があることに気づきました。患者さんの生活の拠点は自宅内のどこなのか(自室、リビング・・)、玄関や自宅内は段差があるのか、高さはどの程度なのか、廊下・トイレに手すりはきちんあるのか、自宅はきちんと掃除されているのか、内服薬はきちんと飲めているのか(時には、内服カレンダーやタンスを開けて残薬をチェックさせてもらっています)、訪問診療の時間帯に家族や近所の人がきちんと付き添ってくれているのか、そもそも家族との人間関係は良好なのかなど・・通常の外来診察では10-20分程度しかお話ができないのですが、訪問診療ではそれ以上にたくさんの情報、生活環境や人間関係を観察することが可能です。これは訪問診療の大きなメリットだと思います。
この4月は地域研修プログラムの一環で、都内の研修医1年目の先生が診療所に訪れていました。1週間という短い期間でしたが、とても地域医療に感銘を受けた様子で(和良町の田舎度合いにもびっくりされていました(笑))、訪問診療にも特に興味を抱いておりました。
この日は研修医の先生と一緒に、訪問診療初回のお宅にもお邪魔しました。今まで受診されていた外来ではきちんとされているように見えても、引き出しの中を覗かせてもらうと、そこには大量の残薬がありました。処方日数を調整し、さらに内服しやすいように一包化して処方することにしました。また、お家での生活の様子や廊下の手すりをどのように使うのかを改めて確認することができました。「ご自宅に伺う」というのは診察室での診療と比べるとどうしても手間ではありますが、生活環境や人間関係が手に取るように分かるので改めて大事なことであると認識させられました。より多くの人が安心して自分のご自宅で過ごすことができるように、今後も努力していきたいと思います。
奮闘記 vol.3 2024年3月
皆様こんにちは。和良診療所の堀と申します。
2024年が始まり、はや2か月が経ちました。日が落ちるのもだんだん遅くなってきており、心地のよい晴れた日が増えてきているような印象です。春の訪れが近いことをしみじみと感じております。
昨年末は小中学校に出張授業に行かせていただきましたが、つい先日は地域に住む高齢者に向けて認知症の講演会を行ってきました。「認知症カフェ」と題して地方の集会所に集まっていただき、認知症の概要、簡単な認知症自己チェック、認知症かと思ったら本人·ご家族はどうしたらいいのか等、スライドショーを用いてお話しさせていただきました。椅子に腰掛け、なかには深く相槌を打ちながら聞いてくださる方もいらっしゃいました。
さて、もしも自分が認知症になってしまった場合一体どうしたらいいのでしょうか。また、自分の家族に対して「おや、様子が少しおかしいな」「これはひょっとしたらボケてしまったかな」と感じた場合、私たちは何をしてあげられるのでしょうか。
認知症には治る認知症、治らない認知症があり、認知症の種類によって症状も様々です(詳細は成書をご参照ください(笑))。大まかな流れは、①病院受診の上で認知症の診断を受ける②介護保険を申請し、その人に合ったサービスを利用する、と大きく2つのステップを踏む必要があります。その中でも介護保険を利用することはとても重要で、ご家族様の息抜きになるのはもちろんのこと、患者さん本人もプロの介護を受けることができるメリットがあります。
またカフェでは、介護保険サービスの利用方法、サービスには具体的にどのような種類があるのか等も追加で説明させていただきました。その後は和良地域の昔の写真(白黒写真ばかり!)を見て大盛り上がりする場面や、ティータイムではお菓子やコーヒーを頂きながら初対面の方たち同士テーブルを囲い談笑する場面もありました。
そうこうしているうちに2時間程度のカフェは無事終了。20人程度の参加者でとても大盛り上がりの会でした。
翌週、参加者の方々には「認知症カフェ」の感想をお聞きしてみました。
外来診察中
自分「先日はお休みの日なのに、カフェに来てくれてありがとうね。」
Aさん「あれ、そんなイベントあったかな?」
自分「···」
違う患者さんにも、
自分「先日は、お越しいただきありがとうございました!」
Bさん「そんなもの私は行ってないと思うけれどな。もう忘れてしまったよあはは··」
自分「···」
自分「(なんと認知症カフェを開催したのに、参加者が参加したこと自体をすっかり忘れてしまっている··)」
うーん··嘘のような本当の話です。来年以降の課題として引き続き取り組んでいきたいと思います。
奮闘記 vol.2 2024年1月
皆様、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
皆さんはお正月、充実した時間を過ごせましたでしょうか?2024年が始まってわずか数日ではありますが、毎日のように悲しいニュースが飛び交っております。1日でも早い復興を心から願っております。
さて、昨年12月には和良小学校・郡上東中学校へ出張し、社会科の授業を実施して参りました。
小学校では「和良地域の健康づくり、長寿・健康のひけつ」をテーマに、小学6年生12人を対象に45分間の授業をさせてもらいました。和良村(郡上市合併前)は昔から長寿の村として知られており、2000年に行われた調査では男性長寿日本一に輝いたこともあります。
元々住民の方々の健康に対する意識が高いこと、診療所として健康づくりのプランの策定、公民館で地域住民と話す機会(地域医療懇話会)を定期的に設けていること等、様々な理由があると思います。
そのようなお話を生徒にした後で、和良町民の健康の秘訣を小グループに分かれて模造紙に書いてもらいました。「私のおじいちゃんおばあちゃんは、毎日運動をしている」「食事をかかさず3食食べている」「睡眠をきちんと取っている」など、生活リズムに関する意見や「ゲームをできるだけしないようにする」「おじいちゃんは草刈りをしているから健康だと思うけれど、自分は大人になってもやりたくない」など小学生ならでは(?)のユニークな意見もたくさん出てきてとても新鮮な時間でした。
また、中学校では「受動喫煙」をテーマに中学校1年生15人を対象に授業をさせてもらいました。こちらもタバコに含まれている発がん性物質の話や、電子タバコ・副流煙の話も織り交ぜながら、「受動喫煙を防止するためにはどうしたらいいのか」をテーマに小グループに分かれて話し合ってもらいました。「健康にいいタバコを発明する」「タバコを吸っている同居家族を見つけたら、家の中ではマスクをする」「タバコの味がするキャンディーを作る」など、こちらも面白いアイディアばかりでした。
小学校、中学校のうちから医師として住民の生活に介入できるのは、地域ならではの特色の一つであると思います。病気になった後の「治療」も大事ですが、病気にはどうやったらならないか、どうしたら健康でいられるか、「予防」の観点から考えていくことも患者さんにとってより重要であると考えさせられる時間でした。
奮闘記 vol.1 2023年11月
初めまして。私は岐阜県郡上市県北西部地域医療センター国保和良診療所で医師をしております、堀翔大と申します。栃木県の自治医科大学を卒業し、出身地である岐阜県に医師として帰って参りました。数年間へき地指定病院で勤務することになっているため、現在は診療所で勤務しながら週1回、県内の産婦人科で専攻医として従事させていただいております。
診療所といえば皆さん、どのような場所を想像するでしょうか。陸の孤島にぽつんとある場所、できる検査はほとんど限られている場所・・自分も赴任前はそう考えていました。
郡上市和良町は、岐阜県のほぼ中央に位置する場所にあり観光地である郡上八幡と下呂市の中間に位置しています。岐阜市までは車で1時間半程の場所にありますが、途中つづら折り(くねくね道)の峠を越えなければならず難所の1つです。(今から冬季がとても心配です)
人口は1500人程度、そのうち高齢者人口は770人程(なんと高齢化率50%以上!)の“超”高齢化地域です。診療所としては血液検査、エコー検査はもちろん、レントゲン、CT検査、胃カメラだって行うことができます。ただし放射線技師さんが常駐でいらっしゃらないため、自分がしなければいけない時も多々あります。最近ようやく、体幹部CTを撮像できるようになってきました。(もちろん技師さんと比べるとかなり稚拙な画像ですが・・)。
そんな診療所での体験を少し、皆さんと共有できればと思います。
【症例】
90代男性(ご本人には掲載許可を頂いております。)
主訴:イノシシ牙による右下腿刺創
現病歴:自分で作ったイノシシ罠の様子を見に行ったらイノシシに遭遇、勝てると思っていたが突進され受傷した。
とある平日の16時55分、その男性は独歩で外来に滑り込み受診されました。その男性はその日の2時間前に定期外来を受診され内服薬をもらい帰宅されていた方でしたので、スタッフ一同「どうしたのよ一体!?」と驚きを隠しきれませんでした。
傷をみて慌ててスタッフ総出で処置の準備へ、彼の右足は膝から足首にかけて4か所の刺傷痕、止血は得られていたもののいくつかは脂肪組織が露出し表皮真皮は欠損している状態でした。急いで患者さんを処置台に寝かせ、清潔シートをかぶせます。滅菌手袋を装着すれば、小さな診療所の一室も手術室に早変わりです。無影灯だってあります。(おそらく昔の名残でしょうか。)
小1時間にわたる大手術、合計23針の縫合処置が終了しました。処置中も患者さんは笑顔で自分が縫合されている様子を凝視されていました。「自分の傷をみても、気持ち悪くならないですか。」と聞いても、「そんなことはない。」とにこやかに話されました。やはり90代の方のメンタルはすごいですね。
処置後は笑顔で歩かれて帰宅されました、現在は全て抜糸し、創部フォローのために定期的に診療所に足を運んでもらっています。
やっている処置自体は大した処置ではないものの、漫画のような嘘みたいなエピソードに触れ合えるのも地域ならではだと思います。また同時に、地域ならではのご高齢の方々の身体能力の高さ、並外れた精神力の強さにはただただ感心するばかりです。山に1人で出向き、イノシシと対峙する90代の方が都心部にいるでしょうか・・
このように自分が地域で経験したことや興味深い出来事を、発信できればと思います。最後まで閲覧頂きありがとうございました。